マンションを選ぶとき、その後の生活を考えながらイメージを膨らませたり想像したりすると思いますが、いざ買うとなったら購入後のことまで考えておく事が大切です。
不動産投資ではよく「出口戦略」という言葉が使われます。これは”自分が売りたいタイミングと売りたい価格で売却をする事”を意味します。
- マンションにずっと住む予定
- 何か事情が変われば売るかもしれない
- 投資目的なので出口戦略も見据えたい
どのケースでも『購入後には何が維持費としてかかり、維持費をかけるだけのメリットはあるのか?』『できるだけ維持費がかからないものを選んだ方がおトクなのか?』など、マンション購入後の維持費については必要知識として、知っておくべきでしょう。
記事の後半では「消費税が上がると、維持費はどうなるのか?」という事や「維持費を経費として計上する場合」についても取り上げていますので、ぜひこちらもチェックする事をおすすめします。
この記事は【管理業務主任者の執筆・宅地建物取引士の監修】でお届けします。🥇🥈
目次
マンションの維持費の種類とポイント
では、実際にどのような維持費がかかるのでしょうか?
まず最初にまとめると、下記の通りです。
・修繕積立金
・駐車場、駐輪場、バイク用駐車場代等
・固定資産税等
・保険料
こういった維持費の種類は他のサイトなどでもよく紹介されていますので、ここでは、実際に購入後に混同しそうなところや後で役に立つ知識などを中心に解説していきたいと思います。
管理費
マンションの管理費は基本的には持分割合で負担することになるので、部屋ごとに金額が変わってきます。専有面積が広い部屋ほど、管理費の金額が大きいといったイメージです。
管理費はどのようなことに使われているのかというと、共用部分の清掃、エレベーターや消防設備などの点検、管理人の給与、突発的な修繕などに使われています。
実は、マンションの管理規約には管理費を何に使うことができるのかが書かれています。
ここでは国土交通省の標準管理規約から抜粋したものを標準的なものとしてみておきますね。
このような費用に使うことができることになっています。この中で必要なものが管理費として支出されています。
必要のない点検を長年続けていたり、必要な点検を行っていないと、無駄な経費が使われたり資産価値に影響がでる場合もあるので、このあたりは、別の記事でまとめていきたいと思います。
修繕積立金
管理費と一緒に引き落としになるので、修繕積立金と管理費を混同している方も多いのですが、管理費は清掃費や点検費、共用部分の電気代や水道代といった日常的な管理をするのに必要な費用ですが、修繕積立金は計画的な修繕を行うために積み立てられている費用です。
ここでも国土交通省の標準管理規約からみておきますね。
このように大きな金額が必要となる修繕や不測の事態が生じた時に使うために、積み立てられています。マンションの管理組合で積み立てているので、毎月引き落としになっているからといって無くなっている(お金が減っている)というわけではないです。
もし、管理組合で借入が必要になったときなどには、計画的に修繕積立金が積み立てられているのかということを審査の項目にしている金融機関が多いので、適切な時期に修繕を行うことができる金額が積み立てられていることはマンションの価値にもつながります。
駐車場・駐輪場・バイク置き場などの利用料
駐車場・駐輪場・バイク置き場などですが、これは使う場合にはかかります。無料で駐輪できる場合もあったり、1台目は無料で2台目から有料というマンションもあります。
利用の仕方が適切でないときは、利用の方法が変更になることもあります。有料から無料に変わったり、無料から有料に変わったり金額の変更があったりなどです。
固定資産税等
不動産を所有すると固定資産税・都市計画税がかかります。
都心などでは、築年数が古くなっているのに、土地の評価が上がっていることもあります。固定資産税の評価が高いということは、その分、資産価値が上がっているというということでもあります。これはエリアによっても評価額によっても差があります。
保険料
マンションの火災保険は、共用部分は管理組合で加入しますが、専有部分は個人で加入します。
マンション購入時に、住宅ローンを組む際に火災保険への加入が必要になります。最長10年で契約できますが、契約期間が長いほど、割引率が高くなります。途中で解約すると契約期間に応じて解約返戻金があります。
維持費が値上がりする可能性と、値下がりする可能性とは?
マンションの維持費の中で、値上がりする可能性があるのは「保険料」「管理費」「修繕積立金」ではないかと思います。
逆に下がる可能性があるのは「管理費」「固定資産税」「駐車場使用料」になると思います。
- 保険料:近年の風水害の増加によりすでに複数社の値上げが予定されていることなどから保険料は値上がりする可能性があります。
- 管理費:管理人さんや清掃員さんを雇用している場合、最低賃金が上がるとその分人件費が上がったりなどがあるかもしれませんが、設備の入れ替えなどを行うことで、今までかかっていた点検費やメンテナンス費用が下がり、逆に管理費が下がることもあります。
- 修繕積立金:段階的に値上げをする場合もありますが、均等式で早い段階で値上げをしておくと修繕積立金の積立額が多くなります。
- 固定資産税:評価額によって上がることも下がることもあります。
- 駐車場使用料:マンションの駐車場に空きが多くなると、値下げをして募集することがあります。
固定資産税が下がるのは嬉しいのですが、資産価値が下がるということでもあります。
駐車場の使用料が下がるのは嬉しいのですが、駐車場の空きが多いということはマンションの収入が少なくなることになるので、空きがなくマンションの収入が多い方が管理費や修繕積立金の値上げにつながりにくくなる可能性もあります。
保険料が上がるということは、その分リスクが上がっているということなので、リスクに備えることができます。
こういった視点で考えると、維持費が高いことは全てがマイナス要素というわけではないので、住宅ローンなども併せて収支を計算して無理のないようにしておくといいでしょう。
良くある質問
Q.マンションの維持費をみるポイントとは?
マンションによって管理対象となるものが違います。またマンションでも収益事業を行っていることもあるので、何らかの権利をもっていたり収益が大きい場合には、登記をして管理組合を法人化している場合が多いです。
ただ、あまりにも管理費や修繕積立金が高すぎると思う場合には、目安としてはレインズ(国土交通大臣から指定を受けている不動産流通機構)が毎月公表している、管理費、修繕積立金の平均の数値と比較することができます。
Q.マンションと一戸建ての維持費の違いは?
一戸建てでは、マンションのように管理費、修繕積立金などがありません。
その分、修繕が必要になったときには修繕費がかかります。庭の草むしりや掃除などを自分でやることで費用を抑えることはできますが手間がかかります。
手間をかけずに、管理を依頼できるマンションと、自分で掃除をしたり修繕などの手配をしていく一戸建てという違いがあります。
固定資産税は一戸建ての方が高めになります。都心などで土地の評価が仮に1,000万円上がったとすると、マンションでは全員で負担しますが、一戸建てでは1人で負担することになります。固定資産税が上がったとして、実際にいくらで売却できるかということも一つの目安になります。
最終的に売却する可能性があるのならば、相場などもみておくのがいいと思います。
▼令和3年5月31日公表の住宅価格指数
Q.消費税が上がると維持費はどうなる?
管理費に関しては、消費税が上がると支出も増えます。修繕積立金に関しては消費税が上がったから値上げということにはなりません。ただ、大規模修繕工事などの大きな工事では消費税が上がると一気に支出が増えることが予測されます。(これは、一戸建てでも同じことですね)
マンションの劣化状況だけではなく、消費税などの税金の改正、材料費や人件費の高騰などの可能性なども考えながら、大きな修繕はしていくことになると思います。(いつ修繕をしたのかという、たった数日の差で、100万円以上も税金が違うこともあり得ます)
Q.維持費は経費として計上できる?
マンションを賃貸に出している場合、どの維持費が経費として計上できるのかで、節税できる金額も変わってきます。
以下の維持費と購入時にかかったものは経費で計上できます。
- 管理費、修繕積立金(管理組合に支払ったもの)
- リフォーム代や部屋の修繕費(自分の部屋を修繕したとき)
- 火災保険料、地震保険料(年度ごとに計上します)
- 減価償却費(実際の支出はなくても分けて計上できます)
- 税金関係(固定資産税、登録免許税、印紙代なども)
- 仲介手数料や司法書士などへの手数料
- 入居者募集のための広告宣伝費
- 住宅ローンの利息分
- 不動産投資の勉強のセミナー参加費用、不動産投資の勉強のための書籍購入代など
- 物件を見に行くための交通費、自動車保険、自動車税など
これ以外にも、経費として必要と思われるものは認められることもあります。
Q.迷ったときにはどうすればいいの?
「維持費が高すぎるのではないか?」「できるだけ維持費がかからないものを選んだ方がいいのではないか?」と迷ったときには、以下を参考にしてみてください。
- 収支のバランスを考える(収入が減少したり、消費税などで支出が増えることも考慮)
- 売却するかもしれない場合には、土地の公示価格や住宅価格指数なども参考にする
「維持費の安さを重視するのか?」「安心や安全を重視するのか?」「将来的な資産価値や出口戦略を重視するのか?」ということになりますが、少なくてもインフラが整っていないエリアや資産価値が低下しつづけているエリアは避けた方が賢明といえるでしょう。